初市に賽銭を投げつける市神
どんな伝承か
市神の祭は多く正月の初市に行われた。山形では十日町の道中に半ば埋もれていた市神に、一月十日、遊女が賽銭を投げつけ、参詣者が争ってこれを拾う行事が古くから行われていた。明治になって市神は湯殿山の境内へ移されたが、のちに別に道の傍らへ新しく市神をしつらえたという。上ノ山でも初市に投銭行事が行われ、縁起物として蕪と白髭大根が売られた。尾花沢では初市に市神前の道路へ子供が縄を張って通行人から、谷地の大町では正月に里帰りする嫁たちから、市神賽銭をねだる風習があった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。