神田の米で仕込み山に据える神酒の甕
どんな伝承か
佐賀県の井出浦では、霜月十五日に神田で取れた米を使い、当番の者が水垢離をとって身を清めてから酒を仕込んだ。仕込んだ甕は山の斜面の日当たりのよい所に据え、菰で囲っておく。翌年の正月七日に口を開け、八日の祭りに神に供えたのち、村人みなにふるまったという。著者は、神酒だけは自分たちの手で造らなければ気が済まないという感覚が長く残っていた例として、島根県北浜村のゴスイとともにこれを挙げ、柳田国男・瀬川清子の『祭のはなし』を出典として示している。
原典より
また佐賀県井出浦では、霜月一五日に神田からとれた米で、当番が水ごりをとって身を清めて酒に仕込み、その甕を山の傾斜の日あたりの良い所にすえて、菰でかこっておき、翌年正月七日に口開きをして八日の祭りに供え、…—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。