一番尉が唱える勧請吊りの豊作の文句
どんな伝承か
滋賀県甲賀郡石部町東寺(現・湖南市東寺)では、正月の勧請吊りの際に、宮座十人衆のうち最上位にあたる一番尉が唱えごとを述べる風習が伝わっている。「きんじょさいわいくく、廿四の作り物、わせにておくてにて…」という古風な文句で、豊作を祈願する内容とみられる。研究者の原田敏丸氏が採集した事例として紹介されており、古い祝詞が唱えごととして残った例の一つと考えられている。
原典より
きんじょさいわいくく、廿四の作り物、わせにて、おく(長)てにて、さぎのさやながし、あづきのこなりして、いもがしらのじよがんぼう、みがいりて、はちりこ。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。