福原の宿所に入る無の札の火車
どんな伝承か
清盛入道が病みつく前夜、館に仕える女房が夢を見た。炎が激しく燃え上がる八葉の車に、「無」の一字を書いた鉄の札が付けられていた。青鬼と赤鬼が先に立ってその車を引き、福原の入道の宿所の東の門へ引き入れた。女房が夢の中で、どこから何のために来たのかと問うと、鬼は、自分たちは閻魔大王の使いで獄卒という者だ、聖武天皇の御願による日本第一の大伽藍の、金銅十六丈の盧遮那仏を焼き滅ぼした罪で、太政入道を迎えに来た火の車だと答えたという。源平盛衰記に見える話である。
原典より
女房の夢の心地にあれはいづこより何事に來れる者ぞこ問へば鬼答へて云く、我等は閻魔大王の御使に獄卒こいふものなり。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。