千手院の大木に座す赤ら顔の天狗
どんな伝承か
松浦静山『甲子夜話』が伝える天狗の話。ある七月十三日の前日朝五時ごろのこと、御箪笥町の楽人東儀隼人佑の隣に千手院という真言宗の大きな寺があり、その境内の大木の枝の間に人が腰かけて厳然と座っていた。その顔は赤く鼻が高く、世にいう天狗そのものの姿であった。最初にこれを見出したのは鵜川内膳という人の婢僕で、そこから数人がこの異形を目撃したという。語り手の老医草庵は、上野の坊官吉川大蔵卿の母からこの話を伝え聞き、まことの天狗であろうと記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。