野内浦で捕らえられた人魚
どんな伝承か
『津軽一統志』によれば、元禄元年七月二十日に津軽の野内浦で人魚を捕らえたという。人魚の出現や捕獲は古くから記録され、推古天皇の代の近江国蒲生河をはじめ、出雲国安来浦、能登国、若狭国小浜の津、伊勢国二見浦などに現れたと諸書が伝える。人魚は往々にして海岸へ流れ寄り、これを不吉として寺社で祈禱することもあれば、『嘉元記』のように国土が目出たいと瑞兆に数える記述もあった。津軽ではこのほか、宝暦八年三月に石崎村の湊、八月に野内の海に現れたと『津軽日記』『六物新志』が記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など日本の伝説に現れる動物を取り上げ、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどる。序論で起原・歴史的変遷・分類を論じたのち二十六の項目を立て、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。