高知城の番所を崩した黒い大龍
どんな伝承か
新著聞集によると、元禄十四年六月の晦日、土佐の高知城の番所に侍たちが並んで座っていると、にわかに空の色が変わって激しい風が起こり、空一面に朱を流したように見えた。火事かと騒ぐなか、黒田又市という人が縁に立って空を見上げると、長さ三丈ほどの真っ黒な大龍が金色に光る眼を日に輝かせ、四本の足を伸ばして雲の中を泳いでいた。番所の裏手をにらむような眼つきで、その勢いで起こった風のためか、頑丈な番所が一度に崩れ落ち、小松弁右衛門という人が梁に打たれて死に、又市も床板が破れて手足を傷めたという。
原典より
そのいきほひに風おこりけるにや、さしも丈夫成る番所一時にくづれか入り、…—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。