偽の使者で物頭に切腹を迫った狐
どんな伝承か
『窓のすさみ』に載る話。中川家の領国では、疱瘡の薬を狐の生膽から製していた。あるとき狐がこれを恐れ、「今年は十五以上の男の生膽を取る」と国中に触れ回ったため、子を持つ農商は皆他国へ逃げ、郡中が無人のようになった。翌年、勇壮な物頭が狐狩りを願い出ると、狐は重臣に化けて偽の書付を見せ、物頭に古い過ちを咎めて切腹を命じた。覚悟した物頭が支度をしていると、塀の上に多くの狐が首を並べて様子をうかがっているのが見つかり、狐の仕業と露見。物頭は山々を狩って多くの狐を捕らえたという。
原典より
翌年、また勇壯な人が狐狩してこらしてやらうとすると、ある朝、使がきて書付を見せ、其人に切腹を命じた。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。