管狐を切り出した町医伊藤尚貞
どんな伝承か
憑く狐には名のあるものがあり、管狐は信州・遠州・三州にいるという。信州のものは二十日鼠ほどの大きさで、尾は管を割ったような形をし、狐使いはこれを懐に入れて人の過去未来を言い当てるとされた。飯田町堀留の町医伊藤尚貞は、この管狐に憑かれた者を幾度も療治したと語る。狐は手足の爪の先から入って皮膚の内をめぐるので、まず指のあたりを縛り、体をたどって害のない場所へ追い込み、そこを切り裂くと毛の生えた小さな丸いものが現れる。潜む場所は瘤のように盛り上がるので分かるという。その家を探れば天井裏などに狐の死骸があり、尚貞は剥いだ皮を二枚ほど蓄えていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。