伏見稲荷から授かる管の中のくだ狐
どんな伝承か
神仏の使いを借り受けて家へ連れ帰る習わしは多く、伏見の稲荷から狐を授かって来るのもその一つである。昔から言い伝えられるくだ狐は、長さ三寸ほどの青竹の管の中に身をひそめ、街道を百里でも二百里でも、授かった人の家まで付いて来るという。管に隠れるのでくだの名が付いた。ただし連れ帰る途中、茶を一杯飲もうと寄った腰掛茶屋や泊まった旅籠に犬がいると、狐はわが身が怖いので、授けてもらった人にお構いなく、すぐに離れて行ってしまう。それで無事に家まで連れ帰るのは一苦労だったという。
原典より
昔から言い伝へる所のくだ狐なぞは、三寸程の青竹の管の裡に隠れて、街道百里が二百里でも、その人の家まで来る。—— 民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。