盲人に化けて作州へ通った狸
どんな伝承か
中陵漫録によると、四国には狐がいないかわりに狸の害が多いという。先年、備中松山の近くに年を経た狸がいて、月夜に見ると人と少しも変わらず、言葉も人と同じで、いろいろな冗談を言った。鉄砲で撃とうとすると、たちまち姿を消してしまう。この狸は盲人に化け、手引きに手を引かれて月に二、三度ずつ作州へ通っていた。ある日の昼、犬が飛び出して盲人と手引きをともに噛み殺した。人々が驚き騒ぐうち、一、二刻たつと大きな狸の姿になり、そこで初めて備中の狸だったと知れたという。
原典より
此の盲人になつて手引に手を引かれ毎月兩三度づつ作州に至る。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。