キシオジンに掴まれた孫の神隠し
どんな伝承か
上房郡の北部では、乾から巽の方角へ見通しのきく筋道をキシオジンスジと呼び、そこに家を建てるのを忌んだ。明治のはじめごろ、音さんという老人の家で、庚申祭の晩に供える牡丹餅を用意していると、外へ遊びに出ていた孫の姿が見えなくなった。日が落ちても帰らず、手分けして村中を捜したが行方は知れない。三か月ののち、昔寺があったという古坊という場所に、髷と帯が落ちているのが見つかった。カンバラ太夫という陰陽師に占わせたところ、キシオジンが掴んでいったのだろうという答えであった。キシオジンスジは天狗の通り道とも呼ばれる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。