鍋島の猫騒動(佐賀の夜桜)
どんな伝承か
講談でいう鍋島の猫騒動はこうである。松平丹後守重光が領主の頃、客分の龍造寺又七郎が碁の勝負から丹後守の怒りに触れて手討ちにされ、母も世をはかなんで自害したが、その血を飼い猫がなめて姿をくらました。延宝二年三月、渋谷の下屋敷で夜桜を見ていた丹後守に、風もないのに散る桜の上から真っ黒な怪物が飛びかかった。この猫はのちに家臣小森半左衛門の母に化け、さらに愛妾お豊の方を食い殺して成りすましたが、半左衛門らに退治された。佐賀の夜桜とも呼ばれるが、著者は鍋島家の記録にそんな事件はないと述べている。
原典より
この木だけ散るとは、さても不思議と見あげれば、真黒な怪物が太守を目がけて飛びかゝつた。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。