剣池に咲いた一茎二花の蓮
どんな伝承か
『日本書紀』の舒明天皇の条によれば、六年に南の空に彗星が現れ、翌七年の七月には奈良の剣池に蓮の花が咲いた。その花は一本の茎に二つの花をつけていたという。著者はこれを「彗星と妖花」として、推古天皇の時代の人魚や陸奥の狢の歌、太陽が消えた出来事などに続く、大化改新の前夜の社会不安を暗示する一連の妖異の一つに数えている。
原典より
舒明天皇六年(六三四)彗星、南方に出現し、翌七年(六三五)七月、奈良の剣が池に蓮の花が咲いた。—— 日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。