桃花鳥坂に生き埋めにされた近習
どんな伝承か
『日本書紀』垂仁天皇二十八年の条によれば、十一月一日、天皇の同母弟である倭彦命を桃花鳥坂に葬ったとき、仕えていた近習の者たちを集め、生きたまま陵のまわりに埋めて立たせた。彼らは何日たっても死なず、昼も夜も泣きうめき続け、やがて息絶えると体は腐って悪臭を放ち、犬や烏が群がってついばんだという。著者は、ほぼ全身を土に埋められ食も与えられないまま死んでいく鬼気迫る光景を想像するほかないと記す。昼夜聞こえる泣き声に心を痛めた帝は、今後は生きた人を埋めることを止めよと命じた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。