葬式に関わらない信徒寺の毘沙門祭
どんな伝承か
神戸市の北方山間、有馬温泉の近くの旧有野村下唐櫃に、多聞寺という真言宗の寺がある。すこしはなれた上唐櫃という部落にも関係のある寺だが、檀徒をもたない信徒寺で、葬式や法事には全くかかわらず、びしゃもんをまつること、あたかも神社が神をまつるのと変わりがない。葬式や法事は、下唐櫃の恵念寺、上唐櫃の西光寺という檀徒寺がいとなむ。びしゃもんの祭は昔は旧一月十三日、今は二月十三日で、多聞寺のオトーと呼ばれる。当番は二、三日かけて供物をととのえ、紅三枚と白二枚を交互に重ねた五つ餅と、カワラケにもった山海の珍味を供える。当番は一年間、葬式や法事に立ち寄らぬほど厳重な忌に服した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。