蘇夫嶽の一眼一脚の山霊
どんな伝承か
顔の真ん中に目が一つある小僧の話は、今では幼児も信じないが、かつて固く信じた人も多かった。飛騨の高山では雪の夜明けに一つ目一本足の雪入道が出るといい、紀州伊都郡のユキンボや熊野の一本ダタラも雪の足跡と結びつく。越中の旧事を記した肯構泉達録には、婦負郡蘇夫嶽の山霊は一眼一脚の妖怪で、炭焼き二人がこれに殺されて水のある蘆原に捨てられ、麓の桂原の夫婦も薪取りに登って殺され、頭に大きな穴があいていたとある。上州草津温泉では、湯の中の一つ目の老女に声をかけられて気絶した話も伝わる。柳田は、山の神が片目だという信仰が「目が一つ」と誇張されたものと考える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪談義(柳田國男選集 五巻)(柳田國男・柳田國男・妖怪学・1956年(昭和31年))
『妖怪談義(柳田國男選集 五巻)』は、柳田國男が妖怪についての論考を集め、昭和三十一年に自序を付して編んだ論集である。妖怪と幽霊の別を説く総論「妖怪談義」に始まり、川童・小豆洗い・ザシキワラシ・山姥・山男・大太法師・一つ目小僧・天狗などを、各地の言い伝えと方言の呼び名から考える。巻末に全国の妖怪の名を短い説明つきで集めた「妖怪名彙」を置き、大藤時彦の解説を付している。