赤穂原の薬草を煎じる僧
どんな伝承か
針生の集落を出て駒止峠へ向かうあたりに、赤穂原と呼ばれる場所がある。小松沢を少し入ると小さな平地が開け、清水が湧いている。昔、ここに粗末な庵を結び、人目を避けて暮らす僧がいた。僧は薬草を集めておき、村に病人が出ればそれを煎じて飲ませた。また、しばしば山に登っては向かいの山をじっと眺めていたという。その山の姿が播州赤穂によく似ているというのである。やがて村人は、この僧こそ世を忍ぶ大石良雄の仮の姿だと信じるようになり、この地を赤穂原と名づけた。針生の人々はいまも庵の跡を毎年刈り払い、線香を手向けて僧をしのんでいる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説(田島町(編)・田島町史)
『田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説』は、会津の田島町の町史のうち民俗を扱う巻の、伝説を論じた節である。針生・糸沢・金井沢・折橋などに伝わる岩魚の棲まない沢、ダイタンボウの足跡、弘法清水、竜燈、天狗隠し、河童駒引き、アズキトギなどの伝説を、土地の言葉を交えた語りで載せる。自然伝説・歴史伝説・信仰伝説に分けて動物・地形・地名・人物・幽霊・妖怪変化などの項を立て、各話のあとに伝説の型や会津の類例を論じる。