山王峠の爪彫り不動と眼の霊泉
どんな伝承か
弘法大師が爪でもって彫ったという不動が、会津西街道の山王茶屋のかたわらにある。時は天長四年六月のころ、一人の僧が山王峠を越えてこの茶屋に憩い、親切な婆さまのもてなしで茶を馳走になった。僧は婆さまの眼が悪いのを見て、われこそは弘法大師である、そちの親切なる志をめでて治して進ぜるほどに、不動尊をあつく信心して霊泉の水を眼につけよと告げ、手にしていた独鈷で大きな岩の下を突いた。すると泉がこんこんと湧き出し、僧は岩肌に爪先で不動尊の像を彫りつけて立ち去った。婆さまが霊泉をすくって眼につけると、長い間患っていた病がたちどころに治ったという。
原典より
弘法大師が爪でもって彫ったという不動は会津西街道の山王茶屋のかたわらにある。—— 田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説(田島町(編)・田島町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説(田島町(編)・田島町史)
『田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説』は、会津の田島町の町史のうち民俗を扱う巻の、伝説を論じた節である。針生・糸沢・金井沢・折橋などに伝わる岩魚の棲まない沢、ダイタンボウの足跡、弘法清水、竜燈、天狗隠し、河童駒引き、アズキトギなどの伝説を、土地の言葉を交えた語りで載せる。自然伝説・歴史伝説・信仰伝説に分けて動物・地形・地名・人物・幽霊・妖怪変化などの項を立て、各話のあとに伝説の型や会津の類例を論じる。