根岸山の天狗にさらわれた作太郎
どんな伝承か
針生の向山にある沼に影を落とす根岸山には、古くから天狗が棲むといわれた。沼で釣りをしたり山へ山菜を採りに入ると、石の崩れる音や木の倒れる音がしきりに響き、気味の悪い場所だったという。あるとき、腕白者の作太郎が仲間を誘って沼へ釣りに出た。すさまじい音がして子どもらは逃げ帰ったが、作太郎だけが戻らない。村中で松明をかざして三日も捜したが手がかりはなく、四日目の夕方、麻を取り込みに行った者が干場小屋の屋根にぼんやり座る作太郎を見つけた。どこにいたのか尋ねても何も答えず、それきり彼はおとなしくなった。村人は天狗にさらわれたのだと語り合った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説(田島町(編)・田島町史)
『田島町史 第4巻(民俗篇)――伝説』は、会津の田島町の町史のうち民俗を扱う巻の、伝説を論じた節である。針生・糸沢・金井沢・折橋などに伝わる岩魚の棲まない沢、ダイタンボウの足跡、弘法清水、竜燈、天狗隠し、河童駒引き、アズキトギなどの伝説を、土地の言葉を交えた語りで載せる。自然伝説・歴史伝説・信仰伝説に分けて動物・地形・地名・人物・幽霊・妖怪変化などの項を立て、各話のあとに伝説の型や会津の類例を論じる。