手拭いをかぶって踊った飼い猫
どんな伝承か
上州の安中から来ていた下女の家では、手拭がたびたび消えてしまう不思議が続いていた。外から盗みに入った様子もなく、家人が盗るはずもないのに、新しい手拭を出せば次々と失われる。ある日の夕暮れ、老婆がふと納戸を見ると、飼猫のごろが腰屛風にかけてあった手拭を前肢でかき下ろし、頭にのせて二、三歩、踊るように歩いていた。驚いた老婆が投げつけると、猫はじっと見つめたのちのそのそと出て行き、二度と姿を見せなかったという。また芝の清養院では、病中の住持のもとへ夜な夜な飼猫が外から来た大猫を招き入れ、納屋町の踊りに誘われたが、和尚の看病を理由に断る会話を交わしていたと伝わる。
原典より
それを今しも飼猫のごろが前肢でかき下して、一寸と頭にのせたものだ。—— 民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。