焼け跡の林で見つかった火除け観音
どんな伝承か
高田区の新四国三十二番札所に、木造の十一面観音を祀る堂があった。明治の初めごろ、物乞いをし肉を常食する僧が住みついて嫌われ、出て行くよう言われても動かなかった。ある夜、僧の失火らしい火事で堂が焼けたが、観音像は誰も運び出していないのに裏の雑木林で、台座が焦げ黒焦げの姿で見つかり、僧は姿を消した。人々は観音様が追い出したと噂した。修理に博多へ運ぶ途中では町家の火事に出くわし、仏師は手をつけると悪寒と熱に襲われた。明治四十二年春には火事だと叫ぶ声に駆けつけると堂から炎が上がっていたが、扉を開けると風が止んで鎮まった。今も火事の時に観音を堂から出せば火はすぐ消えると崇められている。
原典より
この観音様を、火除け観音と村人は言い、区内の火災のときには、観音様をお堂から出せば、火は直ぐ消えると言って崇めています。—— 篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌)
『篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異』は、筑前の篠栗町の町誌民俗編から伝説の章を収めた部分である。鉾立山の玉依姫、若杉山の岩にまつわる弘法大師や鬼の伝承、薬師・地蔵・観音の霊験、平家岩や古井戸の言い伝えを番号つきの項で並べ、『筑前国続風土記』などの地誌や説明板の文を引く。後半では狐に化かされた話や狐憑き、狸の法座、巷の笑い話、若杉山の白蛇と杵蛇、河童の話を、古老の語りを交えて記す。