柿盗人の入れ墨男
どんな伝承か
福岡県糟屋郡篠栗町の巷の笑い話。秋が深まり山の柿が色づくころ、源八爺さんが竿の挟口と竹籠を持って接木の柿をちぎりに山へ行くと、柿の木の高い枝の間に人影が見えた。「柿盗人め」と怒鳴りつけたいのをぐっと我慢し、「今日は柿ちぎりですなあ、この木はあなたのでしたか」と丁寧に大声で挨拶した。すると相手は木から降りてきて「爺さん済まん、黙って柿をもらっていた」と頭を下げて帰った。よく見るとそれは二の腕まで入れ墨をしたこわそうな男で、源八爺さんは怒鳴らずに済んで命拾いしたと胸をなでおろしたという。
原典より
源八爺さんは、身ぶるいしながら「ようこそ大声で怒鳴り散らさんでよかったあ、ああ命拾いした」とつくづく思いながら柿を籠一杯ちぎって帰りました、とさ。—— 篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌)
『篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異』は、筑前の篠栗町の町誌民俗編から伝説の章を収めた部分である。鉾立山の玉依姫、若杉山の岩にまつわる弘法大師や鬼の伝承、薬師・地蔵・観音の霊験、平家岩や古井戸の言い伝えを番号つきの項で並べ、『筑前国続風土記』などの地誌や説明板の文を引く。後半では狐に化かされた話や狐憑き、狸の法座、巷の笑い話、若杉山の白蛇と杵蛇、河童の話を、古老の語りを交えて記す。