病を治し安産を授ける無相大師の笈
どんな伝承か
正眼寺を開いた無相大師が形見に残した笈は、昔から霊験あらたかとされてきた。笈の紐を借りて心を病む人や重い病の人の頭に載せれば必ず治り、身ごもった女性に頂かせれば丈夫な子が安らかに生まれるといわれ、近在はもちろん遠方からも借りに来る人が絶えなかった。なかには紐の糸や芯の麻を抜き取って家のお守りにする者まで現れたので、笈は門の外へは一切出さないことになり、この習わしは明治時代までつづいたという。笈はいま伊深町の禅徳寺に寺宝として納められ、中段と上段には運慶作と伝わる釈迦・文殊・普賢の小さな三体の仏像が祀られている。
原典より
中には紐の糸や芯の麻糸を抜き取り、各自の家のお守りとする者もあらわれるようになったため、門外には絶対出さぬ事になった。—— 美濃加茂市史 民俗編――伝説(美濃加茂市(編)・美濃加茂市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
美濃加茂市史 民俗編――伝説(美濃加茂市(編)・美濃加茂市史)
『美濃加茂市史 民俗編――伝説』は、美濃加茂市の市史民俗編のうち、第一三章「俗信」と、第一四章「伝説 昔話 世間話」の総説および第二節「伝説」を収めたものである。天候・農事・人事にかかわることわざと俗信、民間療法、樹木の禁忌を挙げたうえで、伊深・蜂屋・太田・三和など市内各地区に伝わる三度栗、龍宮さまの淵、火塚、山男、かぶと淵などの伝説六十四話を記す。昔話・世間話の節は含まず、伝説の多くは題に伝承地区の名を添える。