水鏡に角を見て狂う長者の妻
どんな伝承か
今の佐倉河に高山掃部という長者があった。代々この地方一番の大金持で多くの牛馬を飼い、三百六十人の若者を雇っていた。長者は親切で貧しい人たちを毎年助けた。それにひきかえ妻は欲が深く、朝早く起こすために丸太を枕に雑魚寝させ、一番鶏が鳴くやいなや槌で枕の端を叩いて起こし、一日休ませると一年の損だと言って働かせた。ある年、干ばつで食う物が穫れず、長者は一人娘と相談して倉を開けて分けてやった。それを見た妻はひどく怒り、喉が渇いて水桶の水を飲み干し、高山の清水へ行って池を覗いた。水面に映った顔は角の生えた大蛇に見え、驚いた妻は気も狂って長者を殺し、屋敷に火を放って止々井沼に姿を隠した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。