祭礼の境内を染めた刃傷
どんな伝承か
明治二十数年の旧九月十六日、都鳥の伊勢神社は祭典で境内が人であふれていた。午後四時頃、巨漢が短刀を抜いて斬りつけ、若者が血に染まって倒れた。人々は藤吉を呼べと叫び、茶屋で飲んでいた千田藤吉が現れて巨漢の肩をつかんだ。腰を斬られながらも投げ倒して踏みつけ、千田千代吉が風呂敷ごと短刀を包み取り押さえた。傷ついた七人は拝殿に運ばれ、若柳と水沢から警官と医者が駆けつけた。犯人は紫波郡に住む左官で、都鳥の家の土蔵の壁を塗りに来ており、祭の酒に酔って凶行に及んだのであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。