熱いケイランに泣かされた婿
どんな伝承か
脇野沢に伝わる笑話「鶏卵の話」は、話型でいう咽突き団子にあたる。ある日、婿が嫁の実家に招かれた。実家ではケイランという餅をこしらえてもてなす。愚かな婿は出されたケイランに勢いよくかぶりついた。ケイランは汁こそ冷たいが、中の餅は煮立っている。口に含んだまま熱くてどうにもならず、吐き出すことも飲み込むこともできずに、婿は涙を流して苦しんだ。ケイランは脇野沢でビンソという収穫祭のとき娘たちが作って男たちに食べさせる餅で、あまりに熱いのでケイランの口焼きという言葉さえある。聞き手はそれを知らない愚かさを笑ったのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
脇野沢村史 民俗編――伝説と世間話・キツネ伝承(脇野沢村(編)・脇野沢村史)
『脇野沢村史 民俗編――伝説と世間話・キツネ伝承』は、下北半島の最西端にある脇野沢村の村史民俗編のうち、口承文芸を扱った第七章である。村で採集した一一七話の昔話の特色と語りの場・語り手、地名をめぐる伝説、人を化かすキツネや狐の嫁取り・仇討ちの世間話、夢の予兆をめぐる伝承、天候や豊漁・豊作の諺を収める。章を昔話、伝説と世間話、諺と言葉遊びの三節に分け、昔話には『日本昔話大成』の話型分類による対照表を付す。