片葦と菖蒲田の大蛇、竜子山
どんな伝承か
大字堀越の葦池は、昔、坂上田村麻呂が池のそばで休んで水を飲み、そこで夜が明けたので明石神社を祀ったところという。池の葦は葉が片方にだけ向くので片葦といわれ、馬や牛に食わせると病気になるという。南移の字菖蒲田では、菖蒲田の主の大蛇が美男の若者に化けて娘のもとへ通い、母が袖に糸を付けた針で跡をたどると、若者は蓬の原を抜けた菖蒲田で大蛇となって死んだ。蓬と菖蒲の湯で洗われた娘は死んだ蛇を産み、以来五月五日に屋根へ蓬と菖蒲をさすという。横道の伊母礼沢では、狩に出て帰らぬ若者を捜した竜子が山中に社を建てて息絶え、その山を竜子山と呼ぶようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
船引町史 民俗編――昔話と伝説(船引町(編)・船引町史)
『船引町史 民俗編――昔話と伝説』は、船引町が編んだ町史民俗編のうち、第十一章「昔話と伝説」を収めたものである。昭和五十三年春から町内を回って集めた昔話を話者の名を添えて土地の言葉のまま載せ、坂上田村麻呂や安倍貞任にまつわる地名・社寺の由来など町内の伝説を併せて記す。第一節では語り収めの句、葉煙草ののし作業を語りの座とした伝承の環境、語り手の系譜を論じ、第二節では伝説を自然・歴史・宗教の三つに分けて紹介する。