乳房の形の枝が垂れる乳銀杏
どんな伝承か
病を治すために各地で行われた呪術的な民間療法の例が並ぶ。乳汁が出ることを祈るものとして、京都大悲山峰定寺付近の乳岩明神は、石の裏に小棒状のものが十四ばかり垂れて婦人の乳房に似ており、その乳頭から滴る水を飲むと忽ち乳が出るという。仙台市の乳銀杏は、乳房のような枝が多く垂れ下がっており、その傍らに姥神の祠があって、布で作った乳房と洗米とを供える。岡山市の乳房神社でも布製の乳房状のものを小額面につけて奉納し、下総印旛郡滝勝寺では木製の槌を奉納すると記される。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の俗信 第3――生活慣習と迷信(迷信調査協議会・日本の俗信・1955年(昭和30年))
『日本の俗信 第3――生活慣習と迷信』は、文部省に設けられた迷信調査協議会が昭和三十年に編んだ調査報告書である。昭和二十四―五年の全国の国民慣習調査をもとに、暦の吉凶、霊魂信仰、民間療法、運勢判断などの迷信・俗信が、地域・年齢・性別・職業によってどの程度信じられているかを分析する。原田種雄・今野圓輔・赤松金芳らが分担した九章からなり、第九章に全国から集めた縁起・言いならわしを禁忌・民間療法・卜占・たたりなどに分けて収める。