孤山の狐に化かされた夜道
どんな伝承か
仁井田の常三じいさんが、ご馳走の包みを提げて夜道を歩いていると、いつまでたっても部落に着かない。村の灯は消え、月は西山に隠れ、あたりが暗くなって、まもなく夜が明けた。ふと気づくと包みの中は空になっている。近くに家が何軒か並んでいるのを見て、ここが仁井田だろうと思い、一軒の戸を叩いて、このあたりに常蔵じいさんの家はないかと尋ねた。土間に下りてきた老婆が、だれだい常三はおれの家だがと言って出てみると、立っているのはわが家の常三じいさんである。露だらけの着物を叱られてはっと正気に返り、また孤山の狐にご馳走を狙われた、一晩中桑畑の中を堂々巡りさせられたと悔しがったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
鏡石町史 第4巻 民俗編
『鏡石町史 第4巻 民俗編』は、鏡石町の町史のうち民俗を扱う巻である。第十一章「昔話と伝説」では、笠石・細谷・成田・久来石などのムラに伝わる木や坂・峠・祠堂・石にまつわる伝説を集め、伐ろうとした者が病んだ愛宕様の楓、鼻取り地蔵、和田平太胤長の妻にちなむ化粧が原などの由来を記す。伝説は木の部・坂峠山の部・由来譚・祠堂の部・石岩の部に分けて番号を付し、各話の末尾に話者名か『白河風土記』などの典拠を添える。