奉天の大風を的中させた飯野吉三郎
どんな伝承か
明治三十七年十月、飯野吉三郎は陸軍教育総監部の大島健一参謀が書いた満州軍総参謀長児玉源太郎大将あての紹介状をもらって満州に出発した。白衣と筮竹、算木だけの軽装であった。児玉は紹介状を信用して試みに戦況を占わせた。零下十度を下る厳寒の日、吉三郎は陣営の一隅にみそぎ場をつくり、しめ縄一筋まいた裸体で水垢離をとった。筋骨りゅうりゅうとした身体から湯気さえ立ちのぼり、児玉大将も幕僚たちも神々しいものを感じたという。明治三十八年三月十日の奉天大会戦には「この日必ず大風が吹く。これを煙幕として早暁から総攻撃しろ」と告げ、みごとに的中した。以後彼は生き神様として信頼され、のちに青山穏田の邸宅を買いとった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語・昭和(民俗))
関敬吾編『日本人物語5―秘められた世界』。日本の生活文化に潜む秘密・境界・異界・怪異を主題別に集成する。