葵の上を呪い殺した六条御息所
どんな伝承か
葵の上は夕霧を産んだのちほどなく、苦しみながら世を去った。取り殺したとされる六条御息所は、もと皇太子の妃で、娘は賀茂の斎院となって社に仕える最高の巫女となった人である。六条という呼び名は、京の六条京極に構えた邸に由来する。前の皇太子の未亡人として広い屋敷に娘とふたりきりで暮らし、葵の上を呪い殺してからは光源氏の足も遠のいた。やがて娘が伊勢へ移るのに従い、自らも都を去っていく。気位の高さと鬱屈と孤独は巫女に特有のものだと本書は説いている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。