冗談胆で鯱神を騙し返した兎
どんな伝承か
兎の神が自ら語る。宝刀の鞘の彫刻に飽きて浜へ出て跳ねていると、沖から鯱神の子が近づき、海を支配する亀の翁神が酒を醸したので招きに来たと告げた。背に乗って沖へ出ると、領海の境で鯱神の子は、実は大王の娘が病み、兎の生胆を食べれば助かるというので嘘をついて連れ出したのだと明かした。兎は、正直に言ってくれれば本物を持って来たのに、今日持っているのは冗談半分の胆とふざけ半分の骨だと言い、取りに戻ろうと持ちかけた。砂浜へ飛び降りるなり嘲笑って騙し返し、鯱神の子は悔しがって沖へ去ったという。
原典より
私は毎日、宝刀の鞘の彫刻に専念して、一つ所を見つめて暮らしていた。—— 日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。