森で踊る猫を見た三左衛門
どんな伝承か
板留村に三左衛門という百姓があった。ある時、日暮れてから弘前から帰ってきて藤林まで来ると、森の中で小さい人間のようなものが四五人いて盛んに舞っていた。その一人が「今日は板留の三左衛門ァどうしたば」と言う。よく聞いていると、また一人が「三左衛門ァ昨夜、肴を盗んで弟嫁に出刃庖丁をぶつけられ、足を傷めて来られないのだ」と言った。三左衛門の家では、掛杆に掛けておく手拭や胴着が時々濡れているという不思議が常にあった。思い当たって帰ってみると案の定、猫が肢を引いていた。弟嫁に聞くと、肴を盗んで出刃を投げられ負傷したという。三左衛門が散々に叱りつけると、猫はそれきり姿を隠したそうだ。
原典より
板留村に三左衛門と云ふ百姓があった。—— 日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。