沼の主が託した死を招く手紙
どんな伝承か
長沼のほとりに住む商人の善作と、伊豆沼のほとりに住む百姓の矢作は兄弟であった。伊勢参りの路銀もない矢作が朝草刈りに出ると、草を刈られて困っていた沼の主の大蛇が姫に化けて現れ、路銀と引き替えに富士の裾野の沼に住む妹への手紙を託した。道中で会った六部が手紙を改めると「この男を呑んでくれ」と書いてあり、六部は「宝物の栗毛の駒を授けよ」と書き替えた。矢作は駒を得て、米一合に金貨一升を産ませ七つの蔵を建てたが、欲深な叔父の金作が一升の米を与えたため、駒は水沢まで飛んで化石になったという。
原典より
むかしむかしなあ、長沼(迫町北方の長沼)のほとりに善作と、伊豆沼(迫町新田の伊豆沼)のほとりに矢作という兄弟が住んでたんだと。—— 日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。