夢枕に立った女狐あぐりこ
どんな伝承か
昔、三輪の杉の宮に阿久利子という女が現れ、村の家々の手伝いをするようになった。二人分も働くのでどの家でも歓迎されたが、秋になると姿を消し、春先にまた姿を見せる。その素姓を知る者はだれもいなかった。こうして四年のあいだ村に現れては働いたが、五年目の春には姿が見えなくなった。しばらくして肝煎の夢枕に阿久利子が立ち、任官することになったので村じゅうで金子十両を貸してほしいと頼んだ。村人は十両を集めて杉の宮大明神に納めた。半年ほどのち、ふたたび夢枕に立ち、任官して帰ったが住む家がない、明朝、田の中に杉の生えた所が見えるからそこに堂宇を建ててほしいと頼んだ。翌朝行くと杉の大木が生い茂っていたので、村じゅうで相談して建てたのが始まりだと伝わる。
原典より
昔、三輪の杉の宮に阿久利子という女が現われて、村の家々の手伝いをするようになったが、二人分も働くのでどの家でも歓迎された。—— 日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。