息絶えて地蔵に変わった小僧
どんな伝承か
今から約三百年前、奥州岩代国雀林の里に、近江の田中新兵衛という人が住みつき農に従事した。寛文二年六月の田植え時、代を掻く馬の鼻取りが見つからず、困り果てて眠りについた。明け方に目を覚ますと可愛らしい小僧が目の前におり、鼻取りをさせてくれという。新兵衛は喜んで承知し、名を問うたが答えず、小僧は翌朝来ると言って姿を消した。翌朝、夜明け前に来た小僧が手綱を取ると、荒い馬もおとなしく従い、仕事は例年より早く終わった。ねぎらおうとする間に姿がなく、翌朝探すと家から離れた場所に倒れて息絶えており、抱き起こすとその姿は地蔵尊に変わった。新兵衛はこの場所に堂を建てて安置し、旧六月二十四日を例祭としたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。