九人分の人参を食った東方朔
どんな伝承か
中国で庚申待の講を営む十人の信者がいた。あるとき一人の男が訪ねてきて、仲間に入れてほしいと願い出る。やがてその男が宿を務める番になり、一同は招かれて講を開いた。酒盛りの最中に便所へ立った者が台所をのぞくと、赤ん坊を料理している。驚いて皆に告げ、九人はその場を逃げ帰った。残った一人のもとへ主人が十人分の料理を運んできて、全部食べよと勧める。言われるままに九人分を平らげると、主人は、これは一つ食えば千年生きる人参だと明かした。夜が明けると、その者は大木の切株の上に寝ていたという。もてなしたのは庚申様で、食ったのは東方朔であったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。