便所に出る産女と大力の授かり
どんな伝承か
この村のある家で、旦那が正月十五日の夜遅くに便所へ入ったところ、便所の中から手が出てきて、子供を抱いてくれとせがまれた。これがおぶめかと察した旦那は、前もって教えられていたとおり、差し出された赤子を逆さに抱き、その尻へ短刀を刺した。すると女の姿をしたおぶめが現れ、勇気のある人だと褒め、力と金のどちらでも授けようという。旦那は力を選んだ。翌朝、試しに手水を使って手拭いで手を拭くと、手拭いはちぎれてしまった。金をもらうと、食う物も飲む物も触れる物もみな金になって死んでしまうのだという。おぶめは産で死んだ人の家に出るものとされ、正月十五日には家々で便所を清め、小さな薪で火を焚いて燈明をあげ、以後は便所へ行かないことにしていると伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。