行燈の油をなめた遊女おけさ
どんな伝承か
越後に住む子のない老夫婦が、飼い猫を我が子のようにかわいがっていた。かつては相当の身代であったが、その日の暮らしにも事欠くほど落ちぶれてしまう。猫はその窮乏を救おうと遊女に化け、新潟の妓楼に出ておけさと名乗った。器量よしのうえ声も美しく、たいそうな人気を得る。その唄は誰も耳にしたことのないもので、土地の人はおけさ節と呼んだという。ある夜、行燈の油をなめているところを馴染みの船頭に見られ、口外すれば必ず危ない目に遭うと脅した。翌朝、松前通いの船の上で船頭がつい前夜の恐ろしさを漏らすと、にわかに暴風雨となり、黒雲の上に大猫が現れて船頭を八つ裂きにしたと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。