円山応挙が描いた母の幽霊
どんな伝承か
天明のころ、宮腰寺町、いまの金石町に布屋という商家があった。妻のたみは臨月の身で急に死に、道入寺に葬られた。その後、近くの油屋という飴屋へ、毎晩青ざめた顔の女が飴を買いに来る。主人が不審に思って訊ねても、女は笑いを残すだけで答えない。ある夜そっとあとをつけると、女は道入寺の墓地に至り、木の香も新しい卒塔婆のあたりで消えた。翌朝、快典和尚が読経して墓を掘ると、母の亡骸のかたわらで生後七日ほどの男児が飴をなめていた。和尚は子を道玄と名付けて育て、のちに七代目の住職となった。道玄は円山応挙に母の幽霊を描かせて朝夕拝んだといい、その掛け軸はいまも寺の秘宝として伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第6巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第6巻』は、富山・石川・福井の北陸三県の伝説を集めた伝説集成の一巻である。神々の国争い、弘法大師や義経の遍歴、片目の魚、猿神や化物の退治など、伝承地を示した話を掲げ、県別の類話と古記録の文献記事を添える。巻末に福田晃の解説「主人公にたどる伝承世界」と、県ごとに近世の地誌から市町村史・民話集までを並べた使用資料一覧を置く。