贋物のつもりで失った宝玉
どんな伝承か
むかし大阪に一人の金満家がいた。夜ごと同じ夢を見る。飛騨の山中の小坂という里に名高いかけ橋があり、その下に珍しい宝玉が埋もれていて、闇夜でも橋のあたりが明るいというのである。金満家は番頭を小坂へ遣わした。番頭は毎夜探したが見つからない。橋の近くに住む物持ちの善兵衛が悪戯心を起こし、家に伝わる宝玉の贋物をこしらえて橋の下に隠した。番頭は最後の夜にそれを見つけて持ち帰る。善兵衛は贋物のつもりで置いた玉が先祖伝来の本物だったと後で知り悔やんだが遅く、家は年ごとに衰えて一家離散した。今も善兵衛屋敷の名と崩れかけた井戸が残るという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。