沢村を犬飼村と改めた御師と犬
どんな伝承か
犬飼村はもと沢村といった。農夫の堤左助が人身御供の祭礼の当番にあたり、すげという十三歳の娘を差し出すよう神人・氏人に命じられた。折しも伊勢の御師小芝左太夫が下ってきてこの家に宿り、御師は連れた犬を可愛がっていた。左太夫は名代として四手をかけた笹を持ち、宮に籠もる。夜半過ぎ、風が激しく戸が開いて一丈ばかりの大猿が襲いかかったが、連れの犬が追いかけて食い合い、これを噛み殺した。御師が刀で仕留めると、たちまち狸の姿に変わった。以来この供えはやみ、御師は領主に訴えて伊勢両宮を氏宮として祀り、犬を飼った縁で沢村を犬飼村と改めた。御師は神主となって伊勢氏を名乗り、その山を伊勢山と呼ぶという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。