悪龍を井戸に封じた雨井堂
どんな伝承か
推古帝二年の夏、蘇我馬子がこの地を選んで仏堂を建てようとしたところ、近くの池に棲む悪龍が怒って嵐を呼び、数日にわたり荒れ続けた。馬子が群臣を池に率いて神呪を唱えると、七日目の夕べ、雷鳴のうちに龍は姿を消したという。堂は落成したが、龍の執念で一帯の水脈が涸れ、村人は他国へ移り、寺も荒れるにまかせられた。弘仁十四年の春、訪れた弘法大師が龍王と弁財天を祀って堂を建て直すと、池のほとりから清水が湧いた。龍泉の名はこれによる。大師は八大龍王を井戸に封じ、上に石を重ねて修法し、旱のときは石を一枚ずつ払って雨を祈れと教えた。その井戸が今の雨井堂だと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。