大鏡池の舟遊びと天女になった娘
どんな伝承か
今から六百五十年ほど前、吉野地方随一の長者であった三尾の木屋長左衛門が、薊岳の八合目にある大鏡池に舟を浮かべて豪遊したことがあった。舟には八和田村の矢師勘兵衛の美しい娘も乗っていた。春の日が傾くころ長者が金扇をかざして夕陽を呼び戻すと、たちまち四方から黒雲が湧いて大雨となり、一同は逃げ帰った。その夜、詫びに向かった弟の丈左衛門は天狗のまないた岩で天狗にさらわれ、宴に加わる。ふと池を見ると裸で泳ぐ美女がおり、昼の娘であった。娘は天から下りた天女の衣を着て、ともに天へ昇ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。