八幡様の争いと鯉幟の禁忌
どんな伝承か
岡山県内には五月の節句に鯉幟を立てない村が点在し、金山の山麓にある畑もその一つである。谷を隔てて向かい合う畑と鮎帰の八幡様は、日ごろから仲が悪かった。ある年の五月節句、ついに両者は争いを起こし、勝負は容易に決まらなかったが、日の暮れかかるころ鮎帰の八幡様が畑の八幡様を斬り伏せて勝った。この戦いのあった場所を切り畑と呼び、勝った神が愛馬の鞍を木に掛けて休んだ場所を鞍掛と呼ぶ。敗れた畑の八幡様の氏子は以来鯉幟を立てるのを忌み、逆に鮎帰では猿を描いた幟を高く掲げるのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。