鬼を斬り殿を射た百合若大臣
どんな伝承か
昔、壱岐の国には沢山の鬼がいて、時々筑前の国へ攻めて来ては、風の袋をひろげて大風を吹かせ、村の若い娘たちをさらって行った。筑前の百合若大臣は見かねて壱岐へ鬼退治に渡ったが、家老たちは百合若を島に置いて逃げ帰ってしまった。百合若は鬼と七日七夜にらみ合い、片目ずつ交替で開いて目を休ませ、ついに目ばたきをした鬼を斬った。船がなくなり長く島で暮らすうち、髪はのび垢はついて山男のようになった。やがて筑前に帰り、片泊の乳母の家を訪ねたが、上下二列に生えた歯で正体が知れぬよう笑わなかった。ある日、もとの家老である殿様が家来に弓の試合をさせ、誰も的に当たらぬのを見て百合若はつい笑ってしまう。怒った殿様に射させられた百合若は、的を射ずに殿様を射殺し、再び殿様となった。壱岐には今でも鬼のいわやがあるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。