人魚を食べて年を取らぬ津熊の娘
どんな伝承か
むかし、このあたり(金光町津熊)は海だった。ある日、この海から人形魚(人魚)がキャッキャッと鳴いているのをとった漁師が、珍しい魚だといって人々を呼び馳走を出した。人々は妙な魚なので食べず、途中までもらって帰って海へ捨てたが、中の一人が酒に酔って捨てるのを忘れて帰った。脱ぎ散らした着物を娘がたたんでいると、たもとの中に馳走の残りが入っていたので、それを食べた。ところが娘はいつまでたっても年を取らず、生きるのが嫌になって比丘尼となり、諸国をまわって最後は川中島の善光寺へ行った。何年も後、津熊の者が善光寺に参ってこの尼と話し、互いに備中の者だと分かった。その者が村へ帰って話を伝え、千年比丘尼というのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。