絵馬から抜け出した雪舟の馬
どんな伝承か
山口市吉敷の滝河内では、いつの頃か「ゴウの原」(神の原・幸の原)付近の田畑が夜ごとに荒らされることがあった。調べてみると、この怪物の正体は、雪舟が描いて奉納した絵馬の馬が抜け出しての仕業だとわかった。里の者たちが雪舟に頼み、絵馬に手綱を描き添えてもらったところ、それ以来田畑は荒らされなくなったという。また一説には、絵馬の眼から四足にかけて刃物の跡があることから、雪舟が自ら馬を殺したためだともいわれる。境内の入口の右側の岩に残る蹄の跡は、このときの馬がつけたものと言い伝えられている。類話では、絵馬は滝塔山竜蔵寺の観音堂に掛けられていたもので、馬の足跡は観音堂の前で消えていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。