墓を掘り返して嵐に消えた道斉
どんな伝承か
昔、安芸国五日市に道空という偉い人がいた。道空は儲けた金を世のために使い、人びとから尊敬されていた。一人息子の道斉は何にでも反対しないと気がすまぬ変わり者で、村の人からあまのじゃくと呼ばれた。道空は百三歳で亡くなるとき、海の中の津久根島へ葬ってくれ、と言い残した。道斉は遺言だけは聞こうと、遺骸を小舟で津久根島へ運び、手厚く葬って墓を建てた。ところが後に、父の本心は海老山の麓に葬ってほしかったのだと聞かされ、その日のうちに島へ渡って墓を掘り返しにかかった。すると空が急に曇って大嵐となり、道斉は帰らぬ人となった。以来、津久根島の上を、父恋し、と鳴きながら一羽の鳥が舞うという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。